FAX注文をECサイト化するために必要なこと

公開 2024年11月14日

FAXは今でもビジネスの場で利用され続けていますが、その利用者数は年々減少しています。現代のデジタル化が進む中で、FAXの利用が減少している理由には、従業員の負担が増えることや、テレワークでは使いにくいこと、また、手作業でのエラーが起きやすいことなどが挙げられます。こうした背景から、業務効率の向上やマーケティングの活用がしやすいことを理由に、FAX注文をECサイトに移行するケースが増えてきています。ECサイト化を進める際には、どんなツールがあるのか、そして必要な機能をしっかり把握することがとても重要です。

FAX保有率と利用率の低下

全国でのFAX保有率は31.3％とまだ一定の需要はありますが、保有率は年収や年代によって異なります。例えば、年収が1,500万円を超える世帯では保有率が50％を超える一方で、年収が200万円未満の世帯では22.1％にとどまっています。200〜800万円の世帯でも保有率は約31.2％で、全国平均とほぼ同じ水準です。

年代別で見ると、20代では保有率がわずか1.1％、30代でも5.6％にとどまっており、若い世代でFAXがほとんど利用されていないことが明らかです。主に高齢者層や高所得者層がFAXを利用していることから、世代や収入によって大きな差がある状況です。

デジタル化が進む現代では、FAXの利用は少しずつ減少しています。若い世代や低所得者層では、メールやスマートフォンアプリなどの方が便利で、コストがかからないため、そうした手段が選ばれています。しかし、ビジネスや特定の分野では依然としてFAXが重要な役割を担っているため、完全になくなるにはまだ時間がかかりそうです。

画像出典：全国では31.3％、最多普及は山梨県の44.0％…FAXの普及状況（ガベージニュース）

ある調査では、4,000人の有職者にアンケートを行った結果、2021年には22.1％が日常的にFAXを使用していたのに対し、2022年には19.9％に減少しています。また、「これまで一度もFAXを使ったことがない」と答えた人の割合も、2022年の37.8％から2023年には39.1％に増加しています。

画像出典：ファクシミリの利用調査結果（CIAJ）

企業でのFAX利用が減少している主な理由として、FAXによる受注処理には多くの手作業が必要なことや、それに伴う従業員の負担増加が挙げられます。また、テレワークの普及に逆行し、FAXはリモートワーク環境での活用が難しく、紙での管理や個人情報の取り扱いにおけるセキュリティのリスクもあります。さらに、手作業での入力ミスや情報の見落としといったヒューマンエラーが発生しやすく、業務効率の低下に繋がっています。

このように、FAXはデジタル化が進んだ現代のビジネス環境では、時代遅れとみなされつつあります。電子メールやクラウドサービスなど、より効率的で安全なデジタルツールが普及しており、FAXに代わるソリューションを導入することで業務プロセスの最適化や生産性の向上が期待できます。そのため、多くの企業がFAXの利用を減らし、効率的なコミュニケーション手段へと移行しているのが現状です。

FAX注文をECサイト化する理由

作業効率が向上する

従来のFAX注文では、在庫状況を確認せずに発注が行われ、受注側が確認して初めて注文が確定していましたが、ECサイトでは在庫状況をリアルタイムで確認できるため、発注と同時に注文が確定します。

さらに、FAX注文では紙を使い、手作業での入力ミスが発生しやすいですが、ECサイト化によってペーパーレス化が進み、入力ミスも大幅に減らすことができ、顧客満足度も上がります。

場所を問わず対応できる

従来のFAX注文システムでは、注文の受付や処理をオフィス内で行う必要があり、オフィスに常駐するスタッフが不可欠でした。しかし、ECサイトを導入することで、どこからでも注文に対応できるようになります。インターネットに接続さえできれば、オフィス外でも注文処理が可能なため、リモートワークの普及が進む現代社会においては、ECサイト化は働き方改革を促進する重要な手段となります。

また、外出先や自宅からでも注文状況の確認や在庫管理ができるため、業務効率や生産性が大幅に向上します。さらに、災害時など緊急時にも事業を継続できるメリットがあります。場所を問わず対応できるECサイトは、企業の競争力を高め、従業員の働きやすさを向上させる手段となります。FAX注文からECサイトへの移行は、ビジネスの未来を見据えた戦略的な選択といえるでしょう。

マーケティングに活かせる

ECサイトでは、顧客の注文履歴をデジタルデータとしてすべて蓄積できるため、蓄積されたデータを分析することで、顧客一人ひとりの購買傾向や好みを詳細に把握できます。顧客のニーズを正確に把握することで、それに基づいた最適な商品やサービスを提案でき、パーソナライズされた対応が顧客満足度の向上と売上増加に繋がります。

さらに、ECサイトで得られるデータを利用すれば、業種別や地域別といったさまざまな観点でマーケティング分析を行うことで特定の業種や地域で人気の商品を把握し、効果的な販売促進活動ができるようになります。FAX注文では得られなかった詳細な顧客情報や購買パターンを活用することで、正確な商品開発や在庫管理も実現できるため、ECサイト化によるマーケティングデータの活用は、企業の成長と競争力強化に欠かせない要素となります。

従来のFAXに代わるツール

インターネットFAX

インターネットFAXは従来のFAX機能をデジタル化したサービスです。PCやスマートフォンを使ってFAXの送受信ができ、外出先やテレワーク中でも利用可能です。データはクラウド上に保存されるため、インターネットがあればどこからでも内容を確認できます。また、紙やインクが不要なため、ランニングコストを削減できる利点もあります。

しかし、導入時には初期費用がかかり、従来のFAXと比べてコストが高くなる可能性もあります。また、月額の維持費が発生するため、費用対効果を考慮する必要があります。さらに、従業員に対して新しいシステムの使い方を教育することも必要です。

オンプレミス型の受発注システム

オンプレミス型の受発注システムは、自社内にサーバーやソフトウェアを設置して運用する方式です。業務や商品に合わせたカスタマイズがしやすく、企業固有のニーズに柔軟に対応できるため、多くの企業が選択しています。また、データを自社内で管理するため、外部に情報が漏れるリスクが低く、セキュリティ面での安全性が高いことがオンプレミス型システムの大きな魅力です。

しかし、オンプレミス型システムには初期費用やランニングコストが高くなる傾向があります。サーバーの購入やメンテナンス、専門スタッフの確保といった費用が発生するため、導入には十分な予算が必要です。さらに、システムの構築から導入までに時間がかかることも考慮しなければなりません。要件定義、システム開発、テスト、運用開始まで数か月から、場合によっては1年以上の期間を要することもあります。オンプレミス型の受発注システムは、長期的な視点で業務効率化を図る企業にとって適した選択肢といえるでしょう。

クラウド型の受発注システム

クラウド型の受発注システムは、インターネット環境さえあればどこからでもアクセス可能で、場所や時間に制約されずに注文処理を行うことができます。クラウド事業者が保守運用を担当するため、企業内部に専門的な知識や技術がなくても簡単に運用が可能です。また、企業の規模や業務量の変化に応じて、システムの規模を柔軟に調整できるスケーラビリティもあり、初期費用を抑えた運用が可能です。多くの場合、月額利用料のみでシステムが利用できるため、コスト面でも優位性があります。

一方で、クラウドサービスには予期せぬ終了リスクがあり、サービスが突然終了する場合には、データの移行や代替システムの準備が必要になります。また、標準機能では対応できないような特殊な業務プロセスがある企業にとっては、クラウド型のシステムはカスタマイズが難しい場合があります。クラウド型の受発注システムは、迅速な導入と柔軟な運用を求める企業に適しています。

FAX注文のECサイト化に必要な機能

上司がスムーズに承認できる機能

FAX注文をECサイト化する際、従来のECサイトでは難しかった上司の承認プロセスを組み込むことが重要です。多くの企業では、一定金額以上の発注や特定の商品の購入に上司の承認が必要となりますが、ECサイトに承認ワークフロー機能を追加することで、上司の印鑑が必要な場合でもECサイトを利用できるようになります。

この承認ワークフロー機能では、注文内容が上司に自動的に通知され、上司はオンライン上で承認や却下を行えます。スムーズに承認を進めるためには、申請者の情報や注文内容、金額などが一目でわかるインターフェースが必要です。さらに、承認待ちの注文や承認済みの注文を一覧で表示する機能も役立ちます。上司が外出先からでもスマートフォンを使って承認できるよう、モバイル対応の機能を導入することで、承認プロセスがさらにスムーズに進行します。

割引設定の機能

従来のFAX注文では割引計算を手作業で行う必要がありましたが、ECサイトでは自動化できます。特にまとめ買いや大量購入の場合、割引設定機能を導入することで、システムが注文数量や金額を自動的に判断し、適切な割引率を適用できるため、顧客はすぐに割引後の価格を確認できるようになります。

割引設定機能では、購入数量に応じた段階的な割引や、特定商品の組み合わせによる割引など、さまざまな条件設定が可能です。ECサイト運営者にとっては、一度割引ルールをシステムに設定すれば、自動的に適用されるため、作業効率が大幅に向上します。また、顧客にとっても、注文時に即座に割引が反映されるため、購買意欲が高まる効果があります。

一括購入に対応できるカート機能

FAX注文からECサイトに移行する際、一括購入に対応できるカート機能の実装が非常に重要です。従来のFAX注文では、必要な商品とその数量を紙に記入するだけで簡単に注文できました。ECサイトでも同様の手軽さを実現するためには、効率的な一括購入機能が求められます。

例えば、過去の注文履歴から再注文できる機能や、よく購入する商品を「お気に入りリスト」として保存し、簡単に一括でカートに追加できる機能が便利です。また、カート内で数量の変更や商品の削除が簡単にできるような編集機能も必要ですが、導入により従来のFAX注文の手軽さと同等か、それ以上の利便性をECサイトで提供できるようになります。

まとめ

FAXは依然として一部のビジネスシーンで利用されていますが、利用者数は年々減少しています。従来FAXを使っていた企業も、ECサイト化することで業務効率を向上させたり、マーケティングに活かすことができる時代です。ECサイト化に必要な機能やツールを理解し、自社に最適なシステムを選ぶことが、今後さらに重要になります。今後もFAXの利用は減少し、ECサイト化が加速することが見込まれるため、早期の対応が企業の成長を支える鍵となるでしょう。

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