ECサイト構築に利用できる補助金は?概要と注意点【2024年】

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補助金とは国や自治体が特定の事業活動を支援するために提供する資金であり、申請に基づいて審査を経て交付されるものです。

助成金とは異なり、補助金には限られた予算や定員が設定されているため、採択されない可能性もあります。また、助成金が条件を満たせばほぼ必ず受給できるのに対して、補助金は企業の事業内容や計画に基づいた競争的な審査が必要となります。

この記事では、ECサイトを構築する際に活用できる3つの補助金、「事業再構築補助金」「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」について紹介します。

事業再構築補助金

事業再構築補助金

事業再構築補助金とは、新型コロナウィルスの影響が長期化し、売上の回復が期待しづらい中、中小企業の事業再生構築を支援することを目的とした補助金です。新規事業、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編のような事業再構築を実施する中小企業であれば申請することができます。

ただし、事業の再構築を目的とした補助金ですので、単にECサイトを構築することを目的にするのではなく、EC事業へ拡大することを不特定多数のユーザーへのアプローチが可能になり、業績向上が期待できるというような再構築を目的にする必要があります。

参考:事業再構築補助金

補助金の申請要件

事業再構築補助金の要件は毎回変わるため、ここからは令和6年5月版の事業再構築補助金の概要を参考にいたします。

ECサイト事業に利用するには成長分野進出枠を使うことになりますが、事業再構築補助金の申請には最低限次の3つの要件を満たしている必要があります。

  • 事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業である
  • 事業計画を金融機関等や認定経営革新等支援機関と策定し、確認を受けていること
  • 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年平均成長率3.0~5.0%(事業類型により異なる)以上増加又は 従業員一人当たり付加価値額の年平均成長率3.0~5.0%(事業類型により異なる)以上増加

上記3点を満たしたうえで、成長分野進出枠(通常類型)を利用するには、以下の要件も満たす必要があります。

【市場拡大要件を満たして申請する場合】
必須要件に加え、以下の要件をいずれも満たすこと

  • 事業終了後3~5年で給与支給総額を年平均成長率2%以上増加させること
  • 取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること

【市場縮小要件を満たして申請する場合】
必須要件に加え、以下の要件のいずかを満たすこと

  • 過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態(※1)に属しており、当該業種・業態とは別の業種・業態の新規事業を実施すること
  • 地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域に属しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること

言葉にすると複雑ですが、実質的には次のことを示しています。

  • 事業の再構築になっていること
  • 金融機関などと事業計画を策定していること
  • 将来的に一定以上の事業成長が見込めること

詳しい要件については毎回変わる可能性が高く、申請の際に専門家への相談を推奨いたします。

補助上限額と補助率

成長分野進出枠(通常類型)の補助上限金については次のように定められています。

従業員規模補助上限額
20人以下1,500万円
21人~50人3,000万円
51人~100人4,000万円
101人以上6,000万円

ただし、補助率は中小企業で1/2、中堅企業で1/3となります。

※短期間に大規模な賃上げを行う場合には補助上限額と補助率が大きく上がります。
なお、中小企業と中堅企業の違いについて、令和6年5月版の事業再構築補助金の概要には記載がありませんが、令和5年8月31日版の事業再構築補助金の概要には次のように書かれています。

製造業その他資本金3億円以下の会社 または 従業員数300人以下の会社及び個人
卸売業資本金1億円以下の会社 または 従業員数100人以下の会社及び個人
小売業資本金5千万円以下の会社 または 従業員数50人以下の会社及び個人
サービス業資本金5千万円以下の会社 または 従業員数100人以下の会社及び個人
中小企業の範囲

中堅企業については、中小企業の範囲に入らない会社のうち資本金10億円未満の会社とあります。

ただし、中堅企業の定義については非常に曖昧で、例えば令和6年度税制改正では、大企業のうち「常時使用従業員数2,000人以下の企業」が中堅企業と位置付けられたり、日本貿易振興機構(JETRO)による「直近決算の売上高が1,000億円未満または常用雇用者1,000人未満の会社」という定義があったりするため、都度確認が必要です。

補助対象となる経費

事業再構築補助金の対象となる経費には次のようなものが挙げられます。

  • 建物費(建物の建設・改修、建物の撤去、賃貸物件等の原状回復、貸し工場・貸店舗等の一時移転)
  • 機械装置・システム構築費(設備、専用ソフトの購入やリース等)
  • クラウドサービス利用費、運搬費
  • 技術導入費(知的財産権導入に要する経費)
  • 知的財産権等関連経費
  • 外注費(製品開発に要する加工、設計等)
  • 専門家経費
  • 広告宣伝・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
  • 研修費(教育訓練費、講座受講等)
  • 対象外となる経費については一例として次のようなものが挙げられています。
  • 補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費
  • 不動産、株式、自動車等車両、汎用品(パソコン、スマートフォン、家具等)の購入費
  • フランチャイズ加盟料、販売・レンタルする商品、消耗品費、光熱水費、通信費など

手続きの流れ

事業再構築補助金の手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 事業計画を金融機関等や認定経営革新等支援機関と策定し、確認を受ける
  2. 交付申請する
  3. 補助事業を実施する(12か月、14か月または28か月)
  4. 実績報告を行い、補助額を確定させる
  5. 補助金の支払い

まずは事業計画を作るところから始める必要がありますが、補助金を申請するためには金融機関や認定経営革新等支援機関の確認が必要です。審査に通り交付を受けられるようになったら補助事業を実施後に実績報告をして補助金を受け取ります。

流れを見てわかるように、補助金は先にもらうものではなく、後からもらうことのできるものですのでご注意ください。また、受給後も5年間はフォローアップ期間となります。この期間の間も手続きを怠ると受け取った補助金の返還ということになりかねませんので注意が必要です。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金のサイトには、「持続的な経営に向けた経営計画に基づく、小規模事業者等の地道な販路開拓等の取り組みや、業務効率化の取り組みを支援するため、それに要する経費の一部を補助いたします。」とあります。

つまり、ECサイトを作ることで販路拡大をすることができれば小規模事業者持続化補助金の利用することができます。以降は第8版小規模事業者持続化補助金ガイドブックに沿って紹介いたします。

参考:小規模事業者持続化補助金

補助金の対象者

小規模事業者持続化補助金の対象者は次の条件を満たす法人、個人事業主、特定非営利活動法人です。

業種常時使用する従業員の数
商業・サービス業5人以下
宿泊業・娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

補助上限額と補助率

ECサイトを作る場合には通常枠または創業枠を利用することが一般的です。この場合の補助額上限と補助率は次のようになります。

通常枠創業枠
補助上限50万円200万円
補助率2/32/3

ただし、インボイスの特例要件を満たす場合には、補助上限に50万円を上乗せすることができます。

補助対象となる経費

小規模事業者持続化補助金の対象となる経費には次のものが挙げられます。

補助対象経費科目活用事例
機械装置等費補助事業の遂行に必要な製造装置の購入など
広報費新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置など
WEBサイト関連費WEBサイトやECサイト等の開発、構築、更新、改修、運用に係る経費
展示会等出展費展示会・商談会の出展料など
旅費販路開拓等を行うための旅費
開発費新商品の試作品開発等に伴う経費
資料購入費補助事業に関連する資料・図書など
雑役務費補助事業のために臨時的に雇用したアルバイト・派遣社員費用
借料機器・設備のリース・レンタル料
設備処分費新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分など
委託・外注費店舗改装など自社では実施困難な業務を第三者に依頼

上記の補助対象となる経費一覧の中にWEBサイトとECサイトは明記されていますが、注意点として、WEBサイト関連費は認められた補助金総額の1/4(最大50万円)を上限とする点です。また、WEBサイト関連費だけでの申請はできませんので必ずECサイト以外の補助対象経費も含める必要があります。

手続きの流れ

小規模事業者持続化補助金の手続きの流れは以下のとおりです。

  • 必要書類の準備と手続き
  • 申請内容の審査
  • 採択・交付決定
  • 補助事業の実施
  • 実績報告書の提出
  • 補助金額の確定
  • 補助金の支払い
  • 事業効果報告

基本的には事業計画書などの書類を提出して採択されれば補助金を受けることはできますが、実績報告に不備があったり、不備が解消されない場合には補助金が受けられないこともありえます。

ものづくり補助金

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)とは、中小企業等による生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金です。

ここでは、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領に沿って紹介いたします。

参考:ものづくり補助金総合サイト

補助金の対象事業

ものづくり補助金を受給するためには、次の3つを満たす事業計画書を策定しなければなりません。

  • 付加価値額が年平均成長+3%以上増加
  • 給与支給総額が年平均成長率+1.5%以上増加
  • 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上

上記の条件を満たしたうえで、次の資本金と従業員数を満たす会社または個人であれば受給申請することができます。

業種資本金常勤従業員数
製造業、建設業、運輸業、旅行業3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
ゴム製品製造業3億円以下900人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業3億円以下300人以下
旅館業5,000万円以下200人以下
上記以外3億円以下300人以下

補助上限額・補助率

通常類型の補助上限額は次のようになっています。

従業員規模補助金額
5人以下750万円
6~20人1,000万円
21人以上1,250万円

なお、補助率は中小企業で1/2、小規模事業者で1/3です。

補助対象となる経費

ものづくり補助金の補助対象となる経費には次のようなものが挙げられます。

機械装置・システム構築費機械・装置、工具・器具の購入、制作、借用に要する経費
専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費
改良・修繕または据付けに要する経費
運搬費運搬料、宅配・郵送料等に要する経費
技術導入費知的財産権等の導入に要する経費
知的財産権等関連経費特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用等
外注費新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費
専門家経費本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費
クラウドサービス利用費クラウドサービスの利用に関する経費
原材料費試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費
海外旅費海外渡航及び宿泊等に要する経費
通訳・翻訳費通訳及び翻訳を依頼する場合に支払われる経費
広告宣伝・販売促進費海外展開に必要な広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、展示会出展等、ブランディング・プロモーションに係る経費

ECサイト構築で補助金を利用する際の注意点

補助金は申請することで資金援助を受けることができますので要件を満たす場合には積極的な活用をすることでキャッシュフローを安定させることができます。しかし、補助金の要件は毎回変更が入りますので、今回使えた補助金であっても次回は使えないかもしれません。

代表的な例ではIT導入補助金が挙げられます。2024年1月29日の17次締め切りではECサイト制作は補助金の対象でしたが、以降は対象外となっています。

また、事業契約書の作成には非常に手間がかかりますので、締め切りを守って提出するためにも入念な事前準備が必要となってきます。

申請しても審査に通るとは限らない

補助金の審査は非常に厳しく、書類の不備や基準を満たしていないと判断された場合、審査に通らない可能性があります。そのため、申請前に必ず書類の内容を確認し、しっかりと把握することが重要です。また、自分でのチェックが難しいと感じる場合は補助金申請をサポートする業者に相談することも1つの方法です。

申請に手間と時間がかかる

補助金の申請には、必要な書類の準備や内容の正確な精査が必要で、思った以上に時間がかかります。申請方法もインターネット方式や郵送方式など複数あり、それぞれを理解するための時間も考慮する必要があります。申請には申し込み期限が設定されているため、スケジュールを十分に検討したうえで進める必要があります。

特に事業計画書はほとんどの補助金審査で必要とされるため、審査に通過するためにもしっかりとした準備が求められます。申請期間から逆算し、余裕を持って書類の作成や要件の理解を進めることが大切です。補助金の申請は決して片手間でできるものではないため、限られた時間の中で不備なく申請できるよう、早めの準備を心がけてください。

補助金支給は事業実施後になる

補助金は後払い制で事業支出の一部が後から補填される形となります。そのため、最初に事業主自身が全額を支出する必要があり、キャッシュフローの計画は慎重に立てることが求められます。例えば、ECサイトの構築に200万円が必要な場合、まず事業主が200万円を支出し、その後に補助金が支払われます。また、補助金の審査に落ちる可能性も考慮し、キャッシュフローを確認しながら計画的に進めることが大切です。しっかりとした資金繰りの準備が、事業の安定した運営に繋がります。

まとめ

この記事では、ECサイト構築に利用できる3つの補助金、「事業再構築補助金」「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」について解説しました。これらの補助金はそれぞれ異なる要件や申請条件を持ち、企業の規模や事業の進め方に応じて活用できます。ただし、補助金は審査に通過する必要があり、事前の準備や計画書の作成が重要です。また、補助金は事業実施後に支給されるため、キャッシュフローの管理も欠かせません。条件を満たす事業者は、積極的に活用することで事業の成長を支援できます。

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ソフトコム編集局

京都でECサイト制作をしているソフトコム編集局です。
このよみものを通して、みなさまのECサイトの疑問やお悩みを解決していきます。

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